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日本に於いて、親の後を継ぐのは美徳とされている。
警察官である父親に倣って自身も警察官になった子供がいたとしたら、普通、世間は誉め称える。教師にしてもそうだし、最近では自衛隊員なんかでもそうだろう。自営業の場合は経営者の親の後を継いだり、それ以外でも『親と同種の職業に就く』という事自体が称賛されるのは常識的感覚となっている。 他方、伝統芸能(歌舞伎、能、狂言)等では、その伝統・極意・真髄を『家業』として、一族が連綿と受け継ぐ形を採っている。 テレビでたまに見る、中村勘三郎一家とかの歌舞伎の一座や、他の旅芸人一家とかがいい例だ。 他に華道や茶道、武芸などでも家業となっているものは少なくない。 こういう類は逆に「その家に生まれたという運命」みたいなものを自動的に課せられたイメージで、ある種の窮屈さを感じてしまうところがあるのは私だけだろうか。 この日本社会の在り方は、二千六百年にも渡り、男系(父系)で継承され、同時にその中で十一月二十三日の新嘗祭(にいなめさい)に代表される宮中祭祀(実は現在では私的に行われている伝統的儀式等)を連綿と受け継がいできた、天皇という存在に集約されている。 日本の象徴である天皇からして斯くの如しであるから、「世襲」は実に日本的、普通という事になる。 一方で、家業の世襲がなされなかったら世間から謗りを受けるのかと言えば、例えば大会社の社長あたりが自分の子供ではなく赤の他人の社員に後継させた場合に、主に「会社を家業としなかった・私物化しなかった」と看做され評価される様に、これはこれで世間からは称えられる。 この辺は日本の社会的な多様性・柔軟性の反映か。 ところが政治の世界になると、途端に「世襲批判」が渦を巻いているのだから笑ってしまう。 政治家も、例えば明治の元勲を父祖に持つ様な人の場合、「後を継ぎたい!」「じいちゃんに倣いたい!」と言い出して見事議員や首長に当選したら、普通はある一定の評価はされると思うんだけどなぁ。そんなのでも駄目だと言い張る風潮が今の世の中にはありそうだ。 しかし、世に渦巻く批判の嵐にも関わらず、実態として日本の政治に「世襲は無い」。 それは、選挙があるから。 不特定多数の有権者に候補者選定の判断が委ねられている選挙が存在する以上、政治家の世襲は成り立たないのである。 ■ 選挙の下に世襲は存在しない 先ず、世襲というのは一般的に血縁等のコネクションを基軸とした、排他的な継承行為を指す。 一方、選挙というのは、これといった縛りも無しに不特定多数から候補者を募り、これまた不特定多数の人間がその候補者達の選考に携わって、「誰が最も相応しいか」を決定する。そこに排他性は無い。 だから、選挙という極めて開かれた過程を経て選ばれた存在は、名実ともに閉鎖的な世襲とは無縁であり、常に不安定な立場でもある。 あったとしても精々、先代の人脈、支援組織等を受け継ぐ優位性があるだけで、選挙で当選しなければ、すぐさま「ただの人」に成り下がる。 そもそも選挙制度は、政治に関わる人間を流動的にするのが目的の一つなのだから、「世襲は一般人と比べて一般常識などの認識が乖離している!」だの「二世は能力が劣るので相応しくない!」と思うんだったら、選挙で永久に当選させなければいいだけだ。こんな危うい制度の下で「世襲」が成り立つわけがない(笑)。 成り立つとするならば・・・現実として、二世どころか五世なんて国会議員すら在るのは結果論に過ぎない。五世なんてものが成り立つ理由の一つとしては、有権者の安定・確実を志向する心理が反映されているからだろう。 安定性や確実性の担保となるのは、主に『先代への信頼』『先代の血縁、薫陶』『先代からの地盤、人脈』等。余程で無い限り、個人の能力の差なんて底が知れてるのだから、何処の馬の骨とも知れぬ不確かな輩(失礼)よりかは、総合的要素に勝るものが選ばれるのは当然といえば当然と言える。この点において二世三世には何ら非は無い。 裏を返せば、安定よりも優先して要求されるものがあれば、または確実さが揺らぐ状況になったら、”その手の後継者”に取って代わることなど容易な場合もあるわけだ。 去年の長崎市長選挙が正にそうだった。 選挙期間中に射殺された現職市長の「急仕立て」な後継候補と、補充立候補した元市役所職員による超短期決戦となった選挙だが、「前職の射殺」に「超短期間」という異例な事態の中、状況は極めて流動的なものとなり、「市制は私物ではなく、市民のものである」と主張して回った補充立候補の田上富久氏が当選した。 他方、この事例から世襲批判の性質について言える事がある。 世襲批判を繰り広げている人は(無暗やたらな)政治の流動化を図っているという事だ。 ▼関連記事 ■ 捨てる神あれば拾う神あり
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拙サイト関連書籍の紹介
危ない!人権擁護法案
-迫り来る先進国型全体主義の恐怖 曖昧な“人権”概念によって不自由社会を招来する亡国法案をメッタ斬り! これまでの運動の全記録と法案の思想的背景を 徹底批判した待望のブックレット。 ある日突然、人権擁護委員会から出頭命令。礼状なしの立ち入り調査。 「人権侵害」と決め付けられたら氏名を公表、文句あるなら裁判しろ… こんな恐ろしい法律がつくられようとしている。 迫り来る先進国型全体主義の恐怖。 私も出ています(実は)。
テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済
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